カミハタ養魚グループは人と生き物が共に暮らす環境をトータルに提案します

KAMIHATA探検隊

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text & phot/神畑重三 協力/神畑養魚(株)

+++ Vol.2 +++

世界3番目の大きさを持つボルネオ島は、
珍しい魚、植物、動物の棲む魅惑の島。

この島を訪れたのは今回で5回目。特に、第1回目のチャーター機とボート乗り継ぎ何日もかけて訪れたスーパー・レッドアロワナの世界唯一の生息地メライ湖探索、第4回目の東カリマンタン(インドネシア領)のマハカム河上流のシマヤング湖に棲む世界唯一の淡水イルカ探索は強く印象の残るものだった。

この島は何度訪れても、その都度新しい発見と出会いがある。今回の旅でもまた新たなボルネオ大自然の神秘に出会えたのである。


午後9時をまわって、ようやくカイアン族の村に帰りついた。長い1日であった。この村にはホテルのような泊まる所がないので、彼らの家に泊めてもらうことになったが、ベットや家具は何もない。土間にビニールシートを敷いた上に、ゴロ寝をして一夜を過ごすこととなった。こちらの夜半は冷え込むため、なかなか寝付けない。朝食にはジャコウネコが調理され、皿の上に山盛りになって出されていた。肉は少し硬いが、臭みもなくまずまずの味である。

野生のオランウータンとの出会い

翌朝、また長いボートの旅を終えてミリーに帰着した。7日目にあたるこの日は、コタキナバルまで飛んで機を乗り換え、サンダカンに着く。空港でガイドのウデイ兄弟の出迎えを受け、休む間もなく目的地キナバタンガン川のログハウスに向かって出発した。

約1時間ほどは舗装道路で快適に走ったが、土道に入るとまた凄い土ボコリの悪路が続く。突然車が急停止した。ウデイが「オランウータン」と叫んで高い木上を指している。その木の上からオランウータンがじっとこちらを見ている。今まで4回もボルネオのジャングルに入っているが、野生のオランウータンにお目にかかるのは初めてである。

やはりこの東部は古くからのボルネオが残っているらしく、新種の発見が期待できそうである。

 
キナバタンガン川を遡上する。ここではボートか小型飛行機が主な交通手段である。

■キナバタンガン川を遡上する。
ここではボートか小型飛行機が主な交通手段である。

ワニが日光浴をしている。むやみやたらと川には入れない。

■ワニが日光浴をしている。むやみやたらと川には入れない。

 

約3時間のドライブでキナバタンガン川に着いた。我々のベースキャンプとなるログハウスは閑静な川沿いの林の中に4軒ほど建っていて、さっそく前の川で釣りを楽しんだ。ビッグノーズキャット、グリーンラスボラなど次々と釣り上げて歓声を上げていた。水質はpH7.0、GH2、HK4であった。翌朝6時起床。いよいよ今日の目的である淡水サメの捕獲に向かう。われわれの他にポートマンという中年で小柄だがたくましい筋肉質の男が同行した。

川は透明度ゼロの黄褐色の水だ。刺し網を仕掛けるポイントは、ログハウスの下流へボートで2時間程度降った所である。途中、両岸に生えている木の枝にはいろいろな種類のサルがいて、われわれを見つけてギャーギャー騒いでいるのが面白い。テングザル、サラベスモンキー、シルバーリーフモンキー、レッドリーフモンキーなどで、中でも漁師達の憎まれものはロングテールマカという「カニクイザル」である。このサルは漁師が川の中に仕掛けたエビを失敬して食べてしまうのだそうだ。

2mほどのワニが浅瀬で日向ぼっこをしているのに出会ったが、ボートを近づけても逃げようともしない。

キャッチ!黄金ナマズ

ここに延縄を仕掛けることにする。餌は先ほど採ったばかりの手長エビである。仕掛け終わってから川岸の漁師の家に上がり、採った魚を料理してもらって腹ごしらえをする。パトリックが用足しに出ていったままなかなか帰ってこないので心配になって川まで見に行くと、彼は、「川の上の便所で用足しをしていたら、それを目掛けていろんな種類の魚が次々と集まってつつくので見ていて面白く、つい時間を忘れた。とにかくこの川は魚が多い。」とニヤニヤ笑いながら言った。さっそく先ほど仕掛けた延縄を引き上げに行く。網を上げていくと黄褐色の水の中から次々と魚が跳ねながら引き上げられてきた。ゴールデンスポットキャットフィッシュ、アーチャーフィッシュ、パンガシウスなどなど。アーチャー(汽水性)が採れたので水をなめてみたが、完全な真水だ。

しかし、お目当てのサメはなかなか姿を見せない。先ほどの漁師の所で、ヨーロッパから来た調査隊が淡水サメを釣り上げている大きな記念写真や、淡水のスティングレーのホルマリン漬けを見ているだけに意気込んだのだが、次々と上がってくるのは小物ばかりだった。

 

■手が青いテナガエビ。これが魚を採る餌。

新種のナマズ!?見たことのない魚ばかりだ。

■新種のナマズ!?見たことのない魚ばかりだ。

 

突然ずっしりと重い確かな手ごたえがあった。引き上げて見るとなんと黄金色にキラキラと輝く見たこともない大型ナマズであった。新種に間違いない。ドッと皆の歓声が上がった。口の中の釣り針を外そうと口をこじ開けると、何とこのナマズ、口の中に卵をくわえているではないか。マウスブリーディングのナマズだ。現地ではマラリスと呼ばれているナマズだが、初めてお目にかかるナマズである。

ナマズの口からヨークサックをつけた稚魚を発見。
 
マウスブリーディングの魚。口の中に稚魚をくわえて保護している。

■ナマズの口からヨークサックを
つけた稚魚を発見。

 

■マウスブリーディングの魚。
口の中に稚魚をくわえて保護している。

興奮覚めやらぬ間に体型がドラドのように全身黄金の鱗を持った魚も上がってきた。さらに銀色に輝くロングノーズバグルス(インディアンシャベルノーズ)も上がってくる。どれもこれも口の中に卵またはヨークサックをつけた仔をくわえているのだ。魚の百科事典みたいなパトリックもこれらの魚は初めてで、文献でも読んだことがないという。

残念ながら目的のサメはとうとう上がってこなかった。しかし、何としてでもサメを採りたいということで、ポートマンと相談して翌朝まで川中いっぱいに流し網を張ることにした。彼は明るい時間に網を張ると他の漁師に見つかって網ごと取られる危険があり、その可能性は50%以上だと言った。相談した結果、もし網を紛失した場合には、網の代金の50%を弁償するということで話をつけ、設置することに決定し、明朝引き上げることにして帰途に着いた。

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