カミハタ養魚グループは人と生き物が共に暮らす環境をトータルに提案します

KAMIHATA探検隊

カミハタ探険隊in AFRICA MALAWI
text & phot/神畑重三 協力/神畑養魚(株)

+++ Vol.3 +++

「透明な湖の底で青く輝く魚たち・・・」

観光客もめったに訪れないアフリカの僻地に広がる美しいマラウィ湖にすむ魚たちは、

まるで宝石のように青く輝いていた・・・


2人の客に100人の売り子

海外に輸出される魚の荷造りの様子を見学したり、ストック場の魚を撮影するため、マネージャーのサウロスにグラントさんのファームを案内してもらった。ストックされている魚はすべてマラウィ湖から採集された野生魚ばかりである。

昼食にJICA(国際協力事業団)のスタッフとして働く三春敏夫さんを招待した。三春さんは先月アフリカから帰ってきたばかりの海外青年協力隊のメンバーであった当社の社員から「マラウィには日本の大使館がないので、万一の緊急事態に備えて、リロングウェのJICAの事務所に連絡しておきます」と連絡してもらっていた相手で、マラウィ大学のブンタ校で約100名の学生を相手に水産事業についての教鞭をとっており、幸いにも魚類学が専門で、グラントさんともよく話が合い、楽しく昼寝のひとときを過ごした。

三春さんが「この湖の深い場所は700m以上もあって、未知の新種がまだいっぱいいる」と興味津々の話題を提供し、「養殖魚としては最も味のいいシルバー・サーモンがこの地に最適で、赴任中になんとか技術を確立しておきたい」というロマンのある話も聞く。

午後から湖に近い原住民の民芸品屋に三春さんの車で連れていってもらうことになり、グラントさんにお金を借りにいくと、「買い値は言い値の半分以下が常識だ。それ以下にするのはあなたたちの腕しだい。がんばって」と発破をかけられた。

道の片側に粗末な茅葺き小屋が40軒ほど並んでいる。土の上に並べられた木彫りの民芸品は、どれもこれもユニークな作品で、欲しいものばかりだが、荷物になるので私はもっぱら社員の土産用にブローチなどの小物をたくさん買い込んだ。べらぼうに安くて、値切る気にもなれないが、グラントさんの忠告を思い出して、心を鬼にして値切った。水上は一点豪華主義で、アフリカ原住民をモチーフにした1mもある素敵な大きな面を手に入れた。

客はわれわれだけだから、2人の買い手に100人以上の売り手が殺到する。それはじつにすさまじく、われわれが引き揚げようとすると、もはやパニック状態で、「いくらでもいいから買ってくれ」と必死にすがりついてくる。逃げるように車に乗り込んで、やれやれと一息ついた。

帰途、夕焼けがあまりに美しいので、車を止めて写真におさめた。大草原の彼方にゆっくり沈んでいく大きな太陽は、これまで見たことのない美しい光景で、真っ赤な空が少しずつ濃くなり、しだいに暮れてゆく情景は、アフリカの大自然ならではの一大スペクタクルで、誰ひとり言葉も出ず、ただただ立ちつくして眺めるだけであった。

道端で木彫りの民芸品を作っている青年。彼らはみんなアーティストである 出来栄えはなかなか良いものがある
■(上)出来栄えはなかなか良いものがある
■(左)道端で木彫りの民芸品を作っている青年。彼らはみんなアーティストである

リコマ島上空でのスリル

リコマ島はモザンビークの領海内にあるマラウィの飛び地で、人口はたった300人ほどしかいない小島だが、この島への興味は、「新種の魚の種類が多い」ことだ。

早朝のサリマ空港には、チャーター機が南のブランタイヤ空港から来てすでに草原の滑走路に待機していた。6人乗りの新品ぴかぴかのビーチ・クラフト新鋭機だ。パイロットは白人の青年で、「私はモスリーと言いますが、誰も私の名前をそう呼んではくれません。モスキート(蚊)と呼ばれています。パイロットという職業のせいでしょうか」と屈託のない笑みをたたえて自己紹介する。爽やかで好感の持てる青年である。同行するのは、グラント夫人、彼女の弟のジョンとその妹、サウロス、それに私たち2名の計6名だ。

草原のリコマ島の滑走路。赤いドレスはグラント夫人
■草原のリコマ島の滑走路。
赤いドレスはグラント夫人
パイロットの好意(?)で機体のドアを取り外されて不安げに離陸を待つ神畑
■パイロットの好意(?)で機体のドアを取り外されて不安げに離陸を待つ神畑

チャーター機は湖上を快調に飛んで、約1時間でリコマ島の草原滑走路に着陸した。そこには悪役スターにぴったりのバラバスという精悍な感じの男性がモザンビークの大勢の仲間を連れて迎えに来ていた、全員がこの島でグラントさんと契約しているダイバーで、グラントさんの名入りのお揃いの黄色いTシャツを着ている。グラントさんはバラバスを非常に高く評価しており、「彼が同行すれば何の心配もない。モザンビーク側の小島でダイビングすることも可能だよ」と言い、「あっち側では新種を発見できる可能性は充分ある」とも言い添えた。

なにやらモスキート君がドライバーを持ってごそごそしていたが、ふと見ると、機のドアが取り外されている。彼がにっこり笑いながら「ドアを外すと、上空から素晴らしい航空写真が撮れますよ。さあ、乗ってください」と誘う。グラントさんからの依頼だという。

「えっ」「冗談じゃないよ」「くわばら、くわばら」と2人で狼狽するが、たくさんの原住民や迎えの人々が興味深げにわれわれの一挙一投足をうかがっている。せっかくの機長の好意をむげにもできず、さりとて恐いからと断れば日本人の沽券にかかわると思って、「覚悟しようや」と2人とも腹を決め、必死の覚悟で乗り込んだ。

2人とも生まれつきの高所恐怖症で、特に私はゴルフ場の吊り橋でも目を明けて渡れないほどの重症患者である。機体の幅は1mそこそこしかなく、機が旋回すると、ベルトを固く締めていても、横腹にグッグゥーと圧がかかって、からだが大きく傾いて、機外にほうり出されそうな感じになる。足は空中でぶらんと浮いたままである。スリル満点―いや、満点以上だ。

空から見るリコマ島は、岩礁に取り囲まれた美しい箱庭のようで、至る所にバオバブの巨木が見える。もう夢中になって、機体から体を乗り出してシャッターを切る。ふと見ると足もとには何もなく、空中に浮いた感じが、景色の素晴らしさに夢中になって、怖さをすっかり忘れている。

モザンビークの領内にあるマラウィの飛地。リコマ島は治外法権の島 上空では足は機体の外へ。恐怖感も忘れてすばらしい景観に夢中になってシャッターを切る
■(上)上空では足は機体の外へ。恐怖感も忘れてすばらしい景観に夢中になってシャッターを切る
■(左)モザンビークの領内にあるマラウィの飛地。リコマ島は治外法権の島

島を1周して草原に戻ってくると、バラバスが「とても美しい評判のステンドグラスがあるんです」と古い教会に案内してくれた。道すがら、日本人の女性2人とばったり出会った。こちらも驚いたが、相手も驚いたらしく、「きゃあ、日本人ですか?」と大喜びしている。

「まさかこんな僻地に観光で訪れる物好きな日本人はいないはずだが」と質問すると、彼女たちは青年海外協力隊のメンバーで、「休暇を利用して遊びに来てるんです」と言う。この島でのわれわれの目的を告げると、「へぇー、潜るんですか。でも、この島の周辺にはワニがいっぱいいるそうですから気をつけてください」と心配してくれる。「この島に来た交通手段は?」とたずねると、「モンキー・ベイからの週一便の汽船で来ました。スペースがあれば、帰りに便乗させてもらえませんか」と頼まれたが、気の毒だけど定員いっぱいなので断わった。

リコマ島の湖畔。色のコンビネーションがすばらしい リコマ島湖畔。でも「ワニ」がいる
■(上)リコマ島の湖畔。
色のコンビネーションがすばらしい
■(右)リコマ島湖畔。でも「ワニ」がいる

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