カミハタ探検隊

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カミハタ探検隊

カミハタ探険隊in AFRICA MALAWI
text & phot/神畑重三 協力/神畑養魚(株)

+++ Vol.2 +++
「透明な湖の底で青く輝く魚たち・・・」

観光客もめったに訪れないアフリカの僻地に広がる美しいマラウィ湖にすむ魚たちは、

まるで宝石のように青く輝いていた・・・


奇岩とバオバブのある風景

水上が水から上がってきて、「凄い、凄い。底には何万円もする魚がうようよ泳いでいる」と興奮している。「長さがゆうに1mにもあって、ウナギに似た人間の腕の太さぐらいのまだら模様の魚が岩の間から顔を出していて、手を出すと口を大きく開けて威嚇してくるんです」とまくし立てる。そのとき、ダイバーたちが水上の顔を見るや否や「わぁーっ」と驚きの声を挙げた。水面に出て来た彼の顔面は、まるで天狗のお面をかぶったように、顔じゅう血で真っ赤に染まっている。鼻血だ。前の日まで1万mの高度を長距離飛行したあと、水圧のかかる湖底にすぐ潜ったのだから、気圧に対するからだの調整が狂ってしまったらしい。水上はそのあともたびたび出血し、夜間にはバスタオルが血でぐっしょり重くなるほど出血し、一時はどうなることかと心配させられた。

ダイバーによると、このあたりは化け物のようなウナギが住んでいるが、デンキウナギではない。物騒なのは、お隣のタンザニア湖に住んでいる巨大なデンキナマズで、これに触ると感電死することもあるという。それよりも恐ろしいのは水中に住むコブラで、この水蛇に咬まれると血清がないため、まず助からないという。また、ビクトリア湖の岸辺の湿地帯にはブラック・バンバと呼ばれる体調10m近くもある全身真っ黒で目と舌だけが真っ赤な蛇もすんでいて、これも猛毒を持っている。アフリカにはきけんな肉食動物だけでなく、水中にもいろいろ凄いのがいるが、幸いこのマラウィ湖の危険動物はワニだけらしい。

帰る途中、湾の対岸に立ち寄ることにした。岸辺は一面がきらきら光る黄金色の美しい砂浜だ。遥か彼方に大きな家ほどもある奇岩とアフリカを象徴する“旅人の木”と呼ばれるバオバブの大木が見えた。この木の幹の中には水脈が流れていて、旅人ののどの乾きを癒してくれるので、この名がある。

旅人の木と言われるアフリカを象徴するバオバブの木
■旅人の木と言われるアフリカを象徴するバオバブの木

雲ひとつない真っ青な空を背景に、巨大な奇岩群がにょきにょきと突出していて、一種異様な風景を作り出している。その奇岩の上にバオバブの木が張りついている。近づいてみると、幹はとてつもなく太く、直径がゆうに3mはあろうかと思われる男性的な大木だが、枝葉が極端に小さく、幹はまろやかな女性的な曲線美を持っている。幹のひんやりした感触は、水が血管のように脈々と流れているからだ。不思議な木だ。たくましく生きている姿が言い知れぬ感動を与えてくれる。

ザーザーと打ち寄せてくる波はまさに海そのものだが、あちこちに打ち上げられたウォーター・レタス(水草の一種)からここが淡水湖であることを改めて認識させられる。

初日でもあり、早目にゲストハウスに戻って、食堂でグラント一家と夕食を共にした。彼にはエスタ夫人との間にルイーズという2歳になる可愛い女の子がいる。孫がいても不思議ではない年齢での初めての子供なので、可愛くてたまらないという感じだ。グラントさんとは初対面だが、そこは同じ業界に生きる者同士、数多い共通の友人たちの現況や、これからの業界の見通しなど、話題はいつまでも尽きることがなく、夜が更けるのも忘れて話し込んだ。南十字星がきらきら輝いている。空気が澄んでいるため、満天の星がプラネタリウムを見ているかのように間近にある。外気が涼しく、風が肌に爽やかで、生きていることの素晴らしさを感じる。

夜中になると、湖からカバが陸に上がってきて「グァ〜」と騒ぐ。カバは日中は暑さを避けてほとんど水中で鼻だけ出して息をしているが、夜になると仲間といっしょに草をあさりに水から出てくる。朝になると、船着場付近は大人の頭ほどあるカバの足跡だらけになっていた。

昼間はのんびり水中で生活。アフリカではカバはけっこう“危険”な動物である ■昼間はのんびり水中で生活。
アフリカではカバはけっこう“危険”な動物である

アフリカ人とダイビングを楽しむ

2日目も絶好の快晴であった。湖面の表水温の平均は雨期で26〜27度、乾期は24度くらいだが、湿度が低いため肌にべとつかず、爽やかに感じられる。洗濯物が乾くのも早い。グラントさんがわれわれの身の回りの世話をしてくれる黒人少年2人と少女1人をつけてくれたが、彼らは洗濯物を毎朝取りにきて、夕方にはアイロンまでかけて届けてくれる。こまごまとよく面倒を見てくれるので本当にありがたい。

この日のターゲットじゃ透明度ナンバーワンのムベンジの南に位置するモンキー・ベイの手前にある小島である。航行距離が長いので、大型ボートを使う予定だが、グラントさん自慢のレディー・ダイアナ号が昨夜遅く修理を終えて戻ってきていた。20人近くは乗れそうだが、用心深いグラントさんは予備として前日の小型ボートも同行させてくれた。

大きなボートはさすがに揺れがなく、快適である。のんびり横になっていると、30分間ほど走ったところで、とつぜんエンストしてしまった。修理に手間取っているので、予備の小型ボートに乗り換えて、ダイアナ号には修理できしだい、あとを追ってもらうことにした。

足ヒレを使って湖の水を飲むダイバー
■足ヒレを使って湖の水を飲むダイバー

ボートには、飲み物やサンドウィッチがふんだんに用意してあった。黒人ダイバーたちもすっかり打ち解け、日本のつまみやお菓子をおいしそうに食べている。彼らはビールの栓を抜くとき、白い歯で「ガキッ!」と一発でこじ開けてしまう。のどが乾くと、潜水用のヒレで水をすくい上げて飲むが、アフリカ青年のなにげない仕草がとてもかっこよく見える。

ボートが島に到着したとき、出発してゆうに3時間が経っていた。どこを見渡しても漁船は一隻も見えない。岸から相当離れているのだろう。水の色は明るい紺色で、ここに来る途中に潜ったインド洋のモーリシャス島のサンゴ礁の海とまったく同じ色だ。ダイバーに水深を尋ねると、20〜30mだが、深いところは数百mあるという。島影でボートを止めると、船頭がするすると錨を降ろした。

水の透明度は高く、きらきらと輝く強い日差しが湖底まで届いて、20m下の水底の錨までよく見える。水底は一面が岩だらけだ。サッカーボール大のものから、プレハブの倉庫ほどもある巨岩まで、丸みを帯びた大小さまざまな岩がぎっしりと敷きつめられている。その上を横切って泳ぐ魚影がかなり濃い。

私も送気パイプをつけて潜ることにした。口にレギュレーターをくわえて、背中にホースをしっかり固定してもらって、足ヒレ、マスクをつけただけのウェット・スーツなしの裸のダイビングである。

船べりに後向きに座って、「ワン・ツー・スリー」と数えて勢いよく水中に飛び込んだが、少し潜ったところで腰のまわりがブカブカして沈んでいかない。魚影と湖底のあまりの美しさに我を忘れ、ズボンを脱がずに飛び込んだのだ。思わず苦笑して、水中でズボンを脱ぎ、船上に放り投げて、また湖底へと潜っていった。

コンプレッサーで送気を受けながら湖底に潜っていく 地図を見ながらポイントを求めて。肌の色はもうアフリカ人なみ
■コンプレッサーで送気を受けながら湖底に潜っていく ■地図を見ながらポイントを求めて。
肌の色はもうアフリカ人なみ

透明度が高いので、いい水中写真が撮れそうだと期待に胸がふくらむ。ここの魚は全体的に小ぶりだ。鉛のウエイト・ベルトがないため、からだのバランスが取りにくい。片手に手頃な岩をつかんで、これを重りにして湖底でじっとしていると、「見かけぬ奴がやって来たな」とばかりに、物珍しそうに近づいてくる魚がいる。しかし、大半の魚は寸暇を惜しむかのように、脇目もふらず岩場の苔をせっせと突ついている。目的はわからないが、岩の上にぺったりと横になって、まるで死んでいるかのような姿勢の魚もいる。ときおり、頭上の上層域を1mもあるレイク・サーモンが猛スピードで泳いでいくのが目に入る。

紺碧の空やコバルトの色の水よりまだ青いコパディ・クロミスを手にする名ダイバーのバイソン
■紺碧の空やコバルトの色の水よりまだ青いコパディ・クロミスを手にする名ダイバーのバイソン
鈴なりになって網にかかってくる
■鈴なりになって網にかかってくる

ダイバーと装身具を替えて潜り続けたが、4人のダイバーの中ではバイソンの潜りがだんぜん群を抜いている。彼はトンガ族の出身で、この部族は湖の周辺に住みついていて、グラントさんによると、よちよち歩きをする前に泳ぎのほうを早く覚えるとか。それほど潜りが達者なのだ。また、この部族はスマートな長足ぞろいのアフリカ人の中で、われわれ日本人と同じような体形の短足で、親しみを感じさせる。

漁法は巻網式で、選んだポイントに幅10m、高さ2m、編目1cmの網をカーテンのように張りめぐらす。上部には浮きが付いているので、網は屏風を立てたようになり、そこに魚を追い込む漁法だ。この装備では深く潜っても25mが限界で、それ以上の深さは無理である。もっとも、エア・ホースそのものの長さがそれくらししかない。網にかかった魚は傷がつかないよう丁寧に外していた。

潜りを十分に堪能したころ、風が出てきたので帰ることにした。帰路は向い風のため波が荒く、1m以上の大波がひっきりなしに押し寄せてきて、まるでシケの海そのものであった。大波が寄せると、ボートマンがエンジンのスロットルを落とし、波まかせにして乗り切る。1つ操作を誤って、横波でも受ければ、ひとたまりもなく横転しそうに思われるが、エンジンの回転を目まぐるしく上げたり下げたりしながら波を乗り切る技術はmさすがにこの湖に住む漁師ならではと感心する。

グラントさんが2隻のボートで送り出してくれた理由は、おそらく帰路の波を心配したからで、実際この荒波を受けてそのことがよくわかった。頭から波しぶきを浴び続けながら、ずぶ濡れになって、やっとの思いで帰着すると、疲れがどっと出てきた。修理に手間取ったのか、ダイアナ号はとうとう姿を見せずじまいだった。

この湖独特のアクアラング装備を使用しないコンプレッサーでの送気の潜水方法について、グラントさんが「この方法はスキューバダイビングのような細かい部品が不要だから、経費が安くて済みます。欠点はホースの長さしか潜れないことと、深い場所だと空気を吸い込むための力が要ることです。この方法を採用して15年になりますが、多くのダイバーが潜って、まだ潜水事故による犠牲者は1人も出していません」と説明して胸を張った。マイアミで使用している漁法を参考に、グラントさんが独自に工夫した方法だそうだ。魚の取扱いも十分に仕込んであるので、輸出する魚の品質に問題ないと自信たっぷりである。

「日本人でこの湖で潜った者がいるかどうか」を質問すると、「5年ほど前にふらりとやってきた女連れの若い日本人がいたが、女性が体調を崩して半月ほど寝込んでいるあいだ、ろくにメシも食わずに、毎日のように自分でボートを出して潜っていました。あんなタフな青年は黒人の中にもそうそういませんね」とグラントさんが当時を思い出して話してくれた。自分たちが最初でなくて少し残念な気がしたが、いろんな日本人がいるものではある。

キラキラ輝く美しい砂浜に巨大な岩が紺碧の空に聳え立つ ■キラキラ輝く美しい砂浜に
巨大な岩が紺碧の空に聳え立つ