カミハタ養魚グループは人と生き物が共に暮らす環境をトータルに提案します

KAMIHATA探検隊

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text & phot/神畑重三 協力/神畑養魚(株)

+++ Vol.4 +++

世界3番目の大きさを持つボルネオ島は、
珍しい魚、植物、動物の棲む魅惑の島。

この島を訪れたのは今回で5回目。特に、第1回目のチャーター機とボート乗り継ぎ何日もかけて訪れたスーパー・レッドアロワナの世界唯一の生息地メライ湖探索、第4回目の東カリマンタン(インドネシア領)のマハカム河上流のシマヤング湖に棲む世界唯一の淡水イルカ探索は強く印象の残るものだった。

この島は何度訪れても、その都度新しい発見と出会いがある。今回の旅でもまた新たなボルネオ大自然の神秘に出会えたのである。


ヒルに襲われながら新種を求めて未開のジャングルへ

こんな物騒なところは早々に退散しようということになり、上流へとボートを進めた。シャークマンがロッジ近くのジャングルの中に先住民もほとんど訪れたことのない小川があると言う。距離をたずねると川岸から2kmほどだろうと言う。2km位ならジャングルの中と言ってもたいしたことはないと決行することにした。そのポイントに接岸して驚いたのは、岸辺には道らしきものが何もないことだ。仕方なくジャングル刀でブッシュを切り開いて道を作って登っていく。おまけに2kmと言っても平地ではなく、250mほどの山越えなのだ。運悪く雨まで降ってきた。

 
道無きジャングルを強行軍。このような所にはヒルがたくさん潜んでいる。

■道無きジャングルを強行軍。このような所にはヒルがたくさん潜んでいる。

急な斜面は、粘土質なので滑りやすい。それこそ滑ってコケたりしようものなら刀で切り開いた鋭く尖った枯れ木の枝がブスリと体に突き刺さってしまう。ポートマンから「木には触れるな。ウルシのようにかゆくなる木が多いから」と脅された。象が近くにいるらしく、異臭が鼻を突く。ポートマンに杖を2本作ってもらい、それを突いて登っていくが、カッパを着ているので蒸れて汗で目も開けられず目がくらんできた。今まで経験した数多くのジャングルトレッキングの中でも最悪の道であった。

偶然発見!ゴールデンキャットフィッシュ。

■偶然発見!
ゴールデンキャットフィッシュ。

 

やっと1時間ほど登って山を越し、目的の小川にたどり着く。細い谷川はほとんど水が流れていなかったが、それでも水たまりに新種らしい数尾のベタを発見。ほっとして倒木の上に腰を下ろして一休みしていたら、案の定手が猛烈にかゆくなってきた。おまけに手の辺りがムズムズするのでふと見ると10匹近いヒルが吸い付いている。慌ててズボンを捲り上げると、下の白いソックスにも真っ赤な血の斑点が点々と付いている。厚いソックスの上からでも血を吸うらしい。大騒ぎしながらお互いにヒルを摘みあいして取った。

ヒル騒動の顛末

帰りは方向を見失ったり、散々な目に遭いながらもやっとの思いでボートにたどり着いた。ものを言う気力もないほど精根尽き果ててしまっていた。ロッジに帰ってまた一騒動。背中がムズムズするのでシャツを脱いで見てもらうと、腰のあたりに血を吸ってパンパンにふくれたナメクジ大のヒルが見つかった。パトリックは「パンツの中にも入っている」と大騒ぎ。みんなで慌てて裸になり、ヒル取りをする。とんだヒル騒動の一幕であった。

 
キナバタンガン川で採れたナマズ。

■キナバタンガン川で
採れたナマズ。

サンダカンでは久しぶりにお湯の出るシャワー付きのホテルに泊まり、ホッとしてくつろいだ。しかし、治安が極度に悪く、夜間は外出禁止である。昼間でもポリスがマシンガンを肩から吊るして街角に立っている。というのも、半年ほど前この地の沖合いのリゾートホテルに滞在していたヨーロッパの観光客20名ほどが、前の小島から越境してきたフィリピンのイスラム武装ゲリラに誘拐され、1人100万ドルの保釈金を要求された。それを払った2~3人のみが解放されたが、ほとんどの人は今なおゲリラの島に拘留されたままなのである。

エピローグ

苦楽をともにしたカミハタ探検隊のメンバー。

■苦楽をともにした
カミハタ探検隊のメンバー。

 

「虎穴に入らずんば虎子を得ず」ということわざがあるが、その意味ではこの地はまさに虎穴であろう。しかしそれだけにいまだ手付かずのボルネオのオリジンが残っており、そのおかげで黄金のナマズなど、珍しい魚も発見できたのであろう。水平線の区別もつかぬほどまばゆいばかりの紺碧の色をした空と海を持つ、すばらしく美しい大自然に囲まれたこの地に、1日も早く平和が訪れることを祈りつつ、今回出会うことのなかった淡水サメにまたいつの日かチャレンジしたいものだと考えながら帰路に着いた。

おわり


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