カミハタ探検隊

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カミハタ探検隊

カミハタ探検隊 in INDONESIA 「まだ見ぬ部族が潜む魔境(マンベラモ)を行く」
text & photo/神畑重三 協力/神畑養魚(株)

+++ イリアン・ジャヤ/2 Vol.2 +++

「まだ見ぬ部族が潜む魔境(マンボラモ)を行く」

日本から「遠くて、そして遠い国」イリアンジャヤの魔境に日本人で初めて訪れる。いったいどんな冒険と出会いが待ち受けているのだろうか・・・。


ハイコに追われて逃げまどうワニ

われわれは機中で「秘境マンボラモの近くのジャングルで金鉱が発見され、最近ダボラという小さな村ができて、1週間に1便だけメルパティ航空が飛んでいるはず」という貴重な情報を機長から入手していた。「ここ1週間は小雨期で、悪天候つづきだったため、小型機はほとんど飛ぶことができなかったが、そろそろ天気も回復するだろう」という喜ばしいニュースも得ていた。

ダボラからの帰りは便がないのでチャーターしたヘリに迎えにきてもらうことに決め、その手続きにヘリの会社まで交渉に赴くと、にこりともしない愛想の悪いオーストラリア人パイロットが26万円の料金を提示した。「少し高すぎるぞ」とハイコが文句を言うと、「ニューギニアではこれが相場で、ましてやダボラまでは飛んだことのない未知のルートだ」とそっけない。ハイコのイリアン教訓第2頁だ。しぶしぶ了承させられて、その代わりに帰りに湖のそばに着陸したり、低空で飛んでもらうことを条件に前払いした。ハイコは持ち金が少ないとかで、私が全額支払う羽目になった。

出発まで時間があるので、近くにあるワニ園へ行くことになった。ワニ農園に向かうときのセンタニ湖に沿って走る道からの眺めは、湖上に数多くの小島が点在して、まるで絵ハガキを見ているようだ。ここは1万haもある広大な湖で、ハイコがレッド・レインボーを発見した記念すべき湖でもある。

ワニ農園の入場料は無料だが、見物人は一人もいない。かなり大規模な設備で、現在は約3万尾を飼育中だという。人工養殖もしているが、大半はマンボラモ水系から捕まえてきたワニで、百以上もあるコンクリート池にサイズ別に収容されていた。係の人の説明では、皮はほとんど日本に輸出されるそうで、成金ニッポンをみせつけられた感じで、思わず目を伏せてしまう。世界中のワニが環境の悪化で激減しているが、それに加えて日本人のワニ皮に対する欲望がワニを絶滅に追いやっているのではないかと肩身の狭い思いがする。

センタニ湖近くのワニのファーム。3万匹ものワニがストックされている。そのほとんどがこれからわれわれが行くマンボラモ水系で捕獲されたもの

■センタニ湖近くのワニのファーム。3万匹ものワニがストックされている。そのほとんどがこれからわれわれが行くマンボラモ水系で捕獲されたもの

そのワニの真っ只中、裸足でカメラを担いで入っていく不死身のハイコ。その彼の天敵がゴキブリとは誰が信じよう

■そのワニの真っ只中、裸足でカメラを担いで入っていく不死身のハイコ。その彼の天敵がゴキブリとは誰が信じよう

とつぜん、係員が大声で騒ぎ出した。なにごとが起こったかと驚いて目を向けると、なんとカメラを担いだハイコがワニの群がるプールの中にのこのこ入っていくではないか。「危ない。戻れ」と大声でわめくが、ハイコは耳も貸さず、すたこらと平気な顔でワニを追っていく。すると、奇妙なことにワニのほうが逃げていくではないか。腹を地面にこすらないように四足で体を持ち上げて懸命に走るワニの姿は、エリマキトカゲの走り方のように滑稽だ。こんな蛮勇をふるう男がゴキブリ1匹に悲鳴を挙げて子供のように手を挙げて逃げ回るとは実際に見た者でなければ誰も信じまい。彼の前生はいったい何であったのか興味がある。

現在、世界中には20数種のワニが分布しているが、ニューギニアに生息するのは1種だけである。この種は生後1年間の成長が早く、すぐに1mに達し、成長後は最大では約4mにまで育つという。ワニの物を咬む力は猛烈に強いが、口を開ける力はそれほど強くないそうで、もしワニに襲われたら口を押さえ込むのが良策だそうだ。「ワニは胃の中に胃石を持つことが多く、この石は水中で泳ぐときのバランスをとるために必要との説もあるが、それと同時に消化を助けるための働きをしている」というワニについての蘊蓄をハイコが語ってくれた。

太陽光がさんさんと振りそそぐ人口約15万人の西イリアンの首都ジャヤプラは、緑の樹木に囲まれたムードのある落ち着いた印象の町だが、2年前に初めてこの町を訪れたときは、四六時中軍警につきまとわれ、あまりいい感じを持てなかった。人間とは勝手な者で、同じものを見ても、その場の気分しだいで印象がころっと 変わってしまう。

ジャヤプラはパプアニューギニアとの国境線間近に位置するだけに、警備が厳重で、何びとも越境はまず不可能だという。旅行者がパプア・ニューギニアに入るには、ここから10時間かけてシンガポールまで戻ってから別のルートで入るしか方法がないという。

秘境への好奇心がつのる

夜中にとつぜんきりきりと胃が痛んで目が覚めた。呼吸するだけで、刺し込むように胃が激しく痛む。胃痙攣の初期症状のようだが、よりによって出発前夜に体調を崩すとはわれながら情けなくなる。明け方まで眠れずに悶々としていたが、いまさら中止するわけにもいかず、予定どおりに決行することにした。

空港の狭い待合い室は人でごったがえしている。クーラーも扇風機もない。見るだけで暑くなりそうな真っ黒な顔の人ばかりだ。出発時間を2時間ほど過ぎて、ようやくチェックインが始まった。係員に行き先を告げると、とたんに彼らの顔付きが変わって、「外国人はダボラには行けない」と手を振ってノーのサインを示す。

「われわれは許可証を持っている」と説明しても聞き入れられず、係員が呼んだのか、軍警がすっ飛んできた。英語を話す若い刑事が厳しい表情で「ダボラには行けない。許可証を見せろ」と強硬なので、「友人が持っているので、ここにはない」と答えると、だだでさえ目付きが悪いのに、まなざしがいっそう険しくなって、「署に同行しろ」ときた。

隙き間もなく生い茂った手つかずのバージン・ジャングル

■隙き間もなく生い茂った手つかずのバージン・ジャングル

すったもんだもめている所にハイコが現れた。彼が許可証を見せると、若い刑事が「マンボラモの名は環境局のビザだけに記載されていて、軍警ビザには記入されていないので無効だ」と突っぱねる。じつは、この書類の不備をわれわれも十分に承知していた。ジャカルタでねばりにねばったが、最終的に警察からマンボラモ行きの許可を出してもらえなかったのだ。

こんな場面で、どこをどう突けば相手が最も痛がるかをよく知っているハイコが「もし君がこの長官の許可証を無視するなら、ジャカルタでこの件を長官に報告しなければならないが、君の名前と所属を教えてくれ」と、頼りがいのある男に変身する。

脅しが効いたのか、若い刑事は何度となく本署と連絡したようで、帰ったらすぐにレポートを提出する条件をハイコに約束させて、不承不承ダボラ行きを認めた。とっくに搭乗時間が過ぎているので、気が気でないが、ハイコは落ち着きはらっている。 「こんなに入境の厳しいダボラとは、いったいどんな所なのか?」と胃の痛みを忘れてしまうほど好奇心が込み上げてきた。

長さ300キロもある秘境マンボラモ水系
■長さ300キロもある秘境マンボラモ水系

小型機の眼下に見えるセンタニ湖は言葉では表現できないほど美しかった。高い山脈を越えたあとは、どこまでも切れ目のない人跡未踏の密林が続いている。こんな凄いジャングルを見るのは初めてだ。帰路はヘリだから、この素晴らしい原始のままのジャングルの上を低空で飛べるのかと思うと期待で胸が高鳴る。