text & phot/神畑重三 協力/神畑養魚(株)
+++ Vol.4 +++
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「あなたにぜひとも 手つかずのアマゾンの素晴らしい大自然を見せてあげたい…」 古い友人でもあるドイツ人探検家ハイコからの誘いで、かねてからの憧れの地、アマゾンの秘境に挑戦するカミハタ探検隊。 一行は一路ブラジルへと飛んだ。1989年のことである。 |
日本人と同じ祖先を持つインディオ
村の広場に行くと、がらんとして誰もいない。機が到着したときは百名近い人が集まってきたのに、と思ってよく見ると、小屋の中からちょろちょろ顔をのぞかせている。私を恐がって警戒しているようだ。 大きなバナナの房がぶら下がっていたので、1本もいで食べた。ちょっと青臭いが、すきっ腹にはいいご馳走であった。ふと見ると、バナナの葉っぱの隙き間から真っ赤なコンゴー・インコが顔を出している。私が歩き出すと、ひょいと降りてきて、後ろをよたよた尾を振りながらついてくる。その後ろを子供たちがぞろぞろついてくる。 ![]() ■バナナは青いがじゅうぶん甘くてうまい |
![]() ■日本人と同じモンゴリアン系なのか、蒙古斑のある彼らの子供 ![]() ■ワイワイ村の赤いコンゴーインコ |
「写真を撮られると命を吸い取られる」
■子供たちの見守るなか、網を引く ![]() ■澄んだひとみのインディオの兄弟 ![]() ■上空での雷鳴と稲妻は、地上とは一味違う物凄い迫力 |
そのうち、肩にかけた袋に子供を入れたおばさんインディオがやってきた。スナップ写真を撮らせてくれと頼むと、いやがってOKしてくれない。アフリカ原住民と同じように、インディオには「写真を撮られると命を吸い取られる」という迷信があるとハイコから聞いていたが、子供に飴玉をやったり、なんとかご機嫌とりしてやっとスナップを撮らせてもらった。 そのとき、子供の黒い尻に蒙古斑があるのがはっきり目に入った。南米インディオの祖先は我々と同じ蒙古系で、5万年ほど前にシベリアからベーリング海を渡って北アメリカ大陸を南下したと言われているが、自分の目でそれをはっきり確かめることができた。やがて下流から「ホウーホウー」と勇ましい掛け声をかけながら特大カヌーが近づいてきた。狩りに出ていた若者たちが帰ってきたのだ。 カヌーの中にはその日1日の収穫か、見かけない動物や魚、バナナの大きな房などが積み上げられていた。間近に見る彼らは、フンドシ1本のたくましい裸であった。真っ赤なフンドシをしたインディオもいて、精悍な面構えはとてつもなく威圧感があり、ひとりぽっちの私はちょっと恐ろしくなってしまう。 まもなくハイコのカヌーがよたよたしながら戻ってきたので、正直ほっとした。ハイコが「魚の輸送箱がいっぱいになったし、これ以上ここにいても意味がないので、きょうのうちにマナウスに帰る」と言う。遅い昼飯を急いで小屋の中で取っていると、大勢のインディオが手に手に木の実で作った首飾りや手製の土器のツボを持って、狭い小屋の中に押しかけてきた。彼らの日用品みたいだが、どれも手の込んだ造作である。物々交換してくれと言うのだ。食事をしている私たちを取り囲んで、顔がくっつきそうになるほど寄ってくるので、暑さとむせかえるような体臭で、とても食事どころではなく、閉口してしまう。 ハイコにせかされて、機に乗り込むと、すぐに離陸した。この小型機は有視界飛行なので、明るいうちに飛行場に着かないと危ないのだそうだ。途中、物凄い雷に出会った。地上で見る稲光とは違って、七色の虹のような雷光が点滅して、落雷する轟音が窓越しにも伝わってくる。雷は飛行機に落ちることはないというが、気持のいいものではない。 |
とつぜん「ガアガア」と無線の雑音が入って、やっと「文明社会に戻ってこれた」という実感がして嬉しくなった。奥地ではラジオが電波の圏外にあって、うんともすんとも言わなかったのだ。もうすっかり暗くなった滑走路には誘導灯がついていて、無事に着陸することができた。行きと違って、税関のチェックは、簡単に済んだ。長谷川と2人で売店に飛び込み、夢にまで見た冷たいオレンジジュースをぐいと飲み、言葉が出ないほどの満足感を得た。そのあとトイレに行くと、蛇口からジャージャーと出てくる色のついていない透明の水が新鮮に感じられ、思わず「もったいない」と心の中でつぶやいてしまう。 ホテルで久しぶりにたっぷり頭からシャワーを浴び、心身ともさっぱりして夕食のテーブルに着いた。明朝、ハイコたちはこんどは南のジャングルに飛ぶと言う。「水系がぜんぜん違って、いままでと違った魚がとれるんだ。いっしょに行こう」と強引に誘うが、われわれはブラジルからペルーに向かう予定なので、残念ながらお断りすることにした。 モニカが「どうしてペルーみたいに治安の悪い国に行くの?私は2年前にあの国でタクシー強盗に会ってとんでもない場所に降ろされて、有り金を全部盗られたのよ。どうしても行くのなら、外出するときは必ず靴の中敷きの下に2、30ドル入れておいたほうがいいわよ」と心配してくれる。ハイコは「カメラを持って外出するときは、必ず肩からタスキ掛けするように。肩にかけただけだと、突き飛ばされて、いとも簡単に盗られてしまう」と親身になって心配してくれる。 ジャングルでは何度も言い争いした間柄だが、乏しい食料を分け合ったり、苦楽をともにした仲だけあって、自然に友情が芽生えたようだ。再会を約束して、固い握手を交して別れた。 |
![]() ■地上最大の有麟魚ピラルクー ![]() ■アロワナもここでは食料 |
