カミハタ養魚グループは人と生き物が共に暮らす環境をトータルに提案します

KAMIHATA探検隊


撮影・文/神畑重三・水上司(株)キョーリン・山中幸利 神畑養魚(株)
協力/M.S.CHONG(HIKARI marketing Malaysia)・周旭明(台湾・上凡出版社)



+++ Vol.3 +++

2、p.b BINTANG KALAL

オーナーは、Mr.Halim Jredjoというポンティアナではいちばんの実力者である。

また、規模的にもいちばん大きく、200~600平方メートルの親魚池4面、1.5m×25mのタイル張りの親魚ストック場、温室、さらに、120cmと90cm水槽を約40本持っている。親魚池は素掘りで側面は木板でできており、褐色のプランクトンの発生している池は透明度10cm以下、換水は強制的に行われず、川から自然に入ってくる水を供給している。雨期には水は透明になるということであった。

  • 水温:年間を通じて28度
  • 水質:pH5.5~6.0
  • 硬度:1dH

水槽には6cmサイズのスーパーレッド、レッドフィン、レッドテールキャット、そして美しいスネークヘッドの親魚、1mもあるスーパーレッドの親魚各種がおり、新しい魚種の産卵にも意欲的である。

マネージャーによれば、昨年の出荷は200尾のみ、今年は2000尾生産の予定で1000尾は出荷済みというが、真偽のほどはわからない。一説には、全インドネシアで昨年のスーパーレッド生産は2500尾といわれている。

また、実際には日本へ輸入されるサイズは、スーパーレッドでは12~15cmが普通である。





■これはグリーン系の親魚か。それでも迫力はさすがだ。



3、ジャカルタ

400平方メートルの親魚池に45~100cmの親魚500尾を混泳させている。給水は近くの自噴する湖から行っており、pH6前後、硬度は1~2dH。規模としては、中ぐらいであるが、何といってもジャカルタに位置しているので何かと有利らしい。


■現地では奇形魚をも大切に飼育していた。

アジアアロワナ養殖技術




■ジャカルタにあるアロワナ養殖場の親魚池。選別、取揚げ用のスペースであろう。




■水の透明度は高くないが、その黄金色のためかえって不気味に映る。



●親魚について

産卵は最小個体で45cm(2.5~3年魚だが、親として使用するのは普通4~5年魚以上である、寿命は平均25年といわれ、熱帯の魚としては長寿である。)今のところ、親魚は川から採ってきた個体を池に放して産卵させる方法で、第1世代の親ばかり。その内、第2世代の親ができて、第3世代の仔ができるのもそう遠い将来の事ではないだろうということだった。ちなみに成長のスピードであるが、

1年め~30cm

2年め体長の20%

3年め体長の5%

4年め以後はほんの少しずつしか大きくならない。最大の個体は、全長1m以上、体高30cmもあるという。

なお、雌雄の外観上の判別はほとんど不可能ということであった。

ただ、メスが産んだ卵をオスが口に含むので、アゴの張り具合でオス、メスの区別をするのだという。

産卵について

1m前後の親になれば約80を産卵するが、平均40くらいが普通とのこと。卵のサイズは約18mm。口内保育期間は6cmサイズまでの約60日ほど。口内で卵から孵化するまでは約半月とのことである。

この間、親はエサを全然食べないという。口に含んで(マウスブリーダーと同じ)いる卵の期間中に、もし口を開けて調べたりすると、ほとんど卵を飲み込んでしまう。また、一度吐き出した卵は2度と口に含んで口内保育をしようとはしない。しかし、孵化してしまうと仔魚は絶対に食べないという。

養殖場では、月に1回親魚のチェックをする。幸運にも我々はMr.ヘンの養殖場でこのチェックシーンを見ることができた。

ベテランのチェックマンが、エラに手をやって調べて放す。この時、親によっては、卵を吐き出したりするので、白い亀甲シャの網の中に追い込んでおき、もし卵を出しても泥の中へ落ちぬよう配慮してあった。

偶然、幸運にも一尾の親が卵を吐き出したのを写真に撮ることができたが、この卵は彼の家の温室の孵化場に持ち帰られ、エアレーションをかけながら孵化させられる。この場合、孵化率はあまりよくないらしい。親の口内保育と異なり、水生菌にやられる確率が高いのだそうだ。


■カプアス川は大形の船も航行可能だ。




■ポンティアナ上空の写真。




■不気味に蛇行するカプアス川の上流。



親の口から稚魚を取り出す適当な時機は、口内保育が始まって約1ヵ月、大きさにして、4cm程度がいちばんよいそうだ。元気な個体はヨークをつけた状態でもエサを捕食する。

またMr.ヘンの温室では親の口からこぼれた卵を集めてガラスの水槽に移し、人工育成しているが、親による口内保育の場合の生存率ほぼ90%に比べ、卵から人工で保育した個体の生存率はあまりよくない。この場合、いつまでもヨークに頼っている個体や、ヨークがのびきって弾力のない個体などはほとんど自力で立ち上がることができないので、これらの個体には外科手術を施し、一尾でも助ける努力をしているらしい。

その方法は、養分が流出しないように木綿糸で縫合し、その後ハサミでヨークを切りはなす(木綿糸は自然に腐るのでよい)ヨークを切除された個体でもエサ(赤虫など)を捕食する体力が残っていれば助かるが、そうでないと、生存できる可能性は非常に低いそうである。とにかく一尾でも助けるべく、懸命の努力がなされている。

産卵期

12月から1月中旬までが産卵期といわれている。これは、天然ものも養殖ものも同じだという。インドネシアの気候は熱帯性で、雨期と乾期とがある。したがって、雨期になると水量が増え、水質に変化(pH、硬度)をきたすのではなかろうか?それが刺激となって発情を促すのではないかというのが、私たちの推測である。

また、雨期に入りジャングルの中の水位が高くなると、木々の枝に止まっている昆虫が、水面からの距離が短くなるためジャンプして捕食しやすくなり、そうすることで充分な栄養がとれ、それが発情を促すということも推測される。


■アロワナの解剖(協力/土凡出版社)





アロワナ養殖の餌料

カエルが主体であるが、どちらかといえばゴキブリ(日本より大型)の方が好きなようである。仔魚の間は生きたエビや捕食可能なサイズの小魚を与えているが、大きくなると、カエル、ゴキブリなど、とにかく水面で動くものには貪欲に食いついてくる。トカゲ、ヤモリも大好物である。

アロワナの品種について

●レッドフィン
号血龍という中国名がついている。 ヒレはスーパーレッドと同じくらい赤いが、鱗の光沢が全くない。価格はスーパーレッドの半分くらいである。

●スーパーレッド
ヒレ、体全体が赤くなる。超血紅龍という。 現地では発色の度合、発色面積で、このスーパーを3段階にわけている(大きくなると背中に濃いグリーンの帯が目立ってくるが、鱗の発色は一番美しい)。

●グリーン・シルバーアロワナ
カプアス川の本・支流に広い範囲で生息している。価格はスーパーレッドに比べ問題にならないほど安い。

●ゴールデンアロワナ
マレーシアが原産であり、全身がゴールドまたはオレンジで、背中にグリーンの帯は見られない。

■活気にあふれたポンティアナのバザール




■汽水系の魚が多く売られていた。

アロワナのエラ整形手術について


■帰国前に立ち寄ったジャカルタのシッパーにて。

プラスチックケースを用意し、水温を下げ、エアレーションでDO値を上げる。その後MS222で魚を眠らせる。

手術器具については、事前にすべて熱湯消毒しておく。魚の体表の乾燥を防ぐため、手術中、絶えず水をかけてやる。その後、めくれたエラをハサミでカットし、病原菌がつかぬよう消毒を充分する。4ヵ月で再生、成功率80%。なぜめくれるかという質問には、水質の変化、特にDO値に問題があるとのことであったが、それ以上詳しくは不明である。

おわりに

いろいろと解決すべき問題はあるが、いずれにしても神秘の扉は少しずつ開いてきた。そして、アロワナの養殖も、現地の人々の努力で軌道に乗りつつあるのは本当に喜ばしい。少しでも約に立つことがあれば、ぜひ私たちも協力したいと考えている。

この前のニューギニアのときもそうだったように、インドネシアの人々の、いかつい真っ黒な顔の中に隠されている素朴な温かい人柄に、すっかり魅了されてしまった。

次回は、雨期の初めにポンティアナからシンタン(Singtang)まで小型機で飛び、それからカプアス川源流(Putussibau)の近くまでボートでそ上し、スーパーレッドの生息する大湿原地帯を訪ねる予定である。想像するだけで、今から胸がワクワクしてくる。

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