カミハタ養魚グループは人と生き物が共に暮らす環境をトータルに提案します

KAMIHATA探検隊


撮影・文/神畑重三・水上司(株)キョーリン・山中幸利 神畑養魚(株)
協力/M.S.CHONG(HIKARI marketing Malaysia)・周旭明(台湾・上凡出版社)



+++ Vol.2 +++

カプァス川水系に生息するアロワナの種類とその構成比

  • グリーン 60%
  • ゴールド(レッドフィンを含む)30%
  • スーパーレッド 10%

彼ら現地のブリーダーの説明によると、スーパーレッドの親から生まれるのは全部スーパーレッドであり(私はそうは思わないが)、生息域も、スーパーレッドとその他の個体とは完全にわかれているということである。ジャングル奥地でアジアアロワナの採集を15年やっているというアヘン氏により、極秘のアロワナ生息地の分布図を特別にもらったが、それによれば、彼らのいうとおり、ある特別な川系以外にはスーパーレッドは生息していないことがわかる。


■こちらは孵化直後。

スーパーレッドの見わけ方


■ヨークサックを付けて泳ぐアロワナの稚魚たち




■ストックルームにはこうした水槽がズラリと並んでいた。

率直にいって、体長15cm以上のサイズにならないとなかなか判別できないらしい。

現地のブリーダーですら、”これはレッドテールだ、スーパーだ”と意見がわかれているのを見ると、小さい時の判別が難しいということがよくわかる。

その中で、彼らから教わった選別のキーポイントは、”尾ひれの透明度”である。尾びれが透明で、薄いピンク色をしているのがスーパーレッドであるらしい。レッドフィンは、小さい時はスーパーレッドと同じようだが、このタイプは体長30cm以上になっても、体に赤い黄金色はないという。

日本に入っているスーパーレッドにしても、意図的にか、あるいは選別のミスによるものかは別として、相当数のレッドフィンが、スーパーレッドとして入ってきているらしい。


■見よ!この発色!我が国ではこれだけの固体は入手できないだろう。


■15)写真中央の木には虫が集まるらしく、必然的にその下にはアロワナが寄ってくるそうだ。
■16)ポンティアナ市街から少し離れた所にあるアロワナ養殖場。
■17)壮大な池には親魚だけで、500尾以上も泳いでいるという。
■18)アロワナの餌となるカエル。
■19)カプアス川に生息するナマズ。この体色をご覧いただきたい。
■20)これもアロワナ大好物のゴキブリ。

ホルモンによるグリーンの色揚げについて

グリーンをスーパーグリーンのような色に人工的に色揚げする方法で、現地では非公開でかなり行われている。

エサにホルモンを混入、あるいは直接注射するのかと思っていたのだが、彼らのやり方は、奥地のジャングルに自生しているある種の木の根を入れた水に、1週間ほど魚を入れておくらしい。そうすると、その魚は1ヵ月から1ヵ月半ほど、ピンク色を保つというのだ。もちろん、その後は本来の色に戻ってしまう。しかし、この色揚げ方法では、ヒレも全部赤くなっているので、よく注意して見ればわかるということだ。


■ウームこれはデカイ!見事な固体だ!

現地養殖場の規模について


■何度見てもワクワクさせられるスーパーレッドの稚魚たち。




■スーパーレッドは尾の発色が勝負だ。

インドネシアには、政府の許可を得たアジアアロワナの養殖場はジャカルタに1軒、ポンティアナに6軒の計7軒あるが、主力は3社で、残りは規模が小さい。

1、THEHENRIE

ポンティアナ市街地より約20km、カプアス川の下流河口域、非常に立地条件のよい場所にある。このカプアス川は水深が深く、大型貨物船も相当上流までは要ることができる。全長700kmもあり、奥地に魅惑のスーパーレッドが生息している。

いずれの養殖場も同じだが、入口の警備は非常に厳重で、ガードマンがいる上に鉄の扉もあり、物々しい気配がする。幅8mの堤状の親魚池2面、FRP1トンタンク50本、10平方メートルのコンクリート池30面、その他、ティラピア養殖場など、驚くほど規模は大きい。コンクリート池ではクラウンローチのブリーディングを行っており、池底をぎっしり埋め尽くすほどの数の個体が養殖されているのには驚いた。

FRP1トンタンクには、レオパードスティングレー、ブラックタイガージャンボ(親は非常に高価で、海で採れた個体しか産卵しない)、珍しいネコザメの一種などがストックされており、非常に興味深かった。

この養殖場のオーナーのMr.ヘンはたいへん温和な人だった。数年前に大きな手術をされたとかで、体調はあまりよくないように見受けられた。

当初、彼は随分私たちを警戒されている様子だったが、日一日とお互いの理解も深まり、自宅へ2度も招待してもらった。初めの夜には見せてもらえなかった3階の極秘の温室も2度めの訪問時には気持ちよく見学させてくれた。

双頭のアロワナのホルマリン漬け、目のない個体、背骨が湾曲したまま大きくなった個体など、写真も自由に撮らせてくれた。そしてまた、取材の圧巻である親魚池のチェックの様子まで、わざわざ私たちに合わせて写真を撮らせてくれたことは、お礼のいいようもないほど有り難いことだった。

余談になるが、我々の今回の取材と奥地ジャングル行きに森林保護局の圧力がかかったのは、どうやら当地のアロワナ業者が我々の目的を誤解したためらしい。彼らは日本の大きな(?)会社の社長と社員が、日本でアロワナの養殖を始めるために調査にくるのだと思ったらしい。日本は水産関連のバイテクでも先進国であるし、生態調査などされると、すぐにも量産するかもしれない。これは死活問題である、と彼らは考えたのだ。

おまけに、普通の業者なら「あれいくら?」「これがいくら?」と聞きまわるところを、私たちは水のpH、硬度、産卵の技術ばかり聞いて、8mmとカメラで取材しまくっていたので、いよいよ本物だと誤解したようだ。


■何時間見ても飽きない見事なウロコ。




■スティングレー


■スパイニール




■タイガーシャーク

お互いの理解が深まって、最後には、ぜひ日本から政府、または大学の優秀な水産の技術者を1名派遣して、我々の技術指導をしてもらえないだろうかと真剣に頼まれる始末であった。

私も、今迄のやり方ではアロワナは枯渇してしまうの違いないと思うし、何とか政府官庁と協力して、孵化した稚魚の何%かをまた川に放してやり、種の保全を考えてやることはとても大切だと説明した。

日本では、既に中央または地方の自治体と組合で、繁殖した稚魚をどんどん海に放流して資源の確保に努めていると話すと、非常に興味を持ったようだった。そういうことができるようになるためにも、日本からの技術者が欲しいということであった。

次号に続く…

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