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KAMIHATA探検隊

カミハタ探検隊inモーリシャス島/台風が吹き荒れるインド洋に潜る
text & phot/神畑重三 協力/神畑養魚(株)

+++ Vol.2 +++

「サイクロン(熱帯低気圧)で荒れる海でダイブ」

"珊瑚礁のパラダイス"と喩えられるモーリシャス島の海。

だが一方でこの島は、サイクロン(熱帯低気圧)の銀座通りとも言われる島であった…。


モーリシャスの海に再度の挑戦

その夜、親身になって世話してくれたインド人ダイバーの家に土産の電卓を持ってお礼に出向くと、とても喜んでくれた。体格のいい40歳過ぎの人で、温和な人柄が顔ににじみ出ている。私の気持ちを察してか、「もし、あしたサイクロン予報がウォーニング1になったら、もう1度トライしますか」と誘ってくれた。もちろん、喜んでOKした。

翌朝、目が覚めるとすぐ、テラスに出て雲行きを確かめた。日差しがやや明るくなり、素人目にも天候が好転していることがわかったので、すぐにでも出発できるよう準備を整えた。前日は初めてのダイビングで要領がつかめず、不必要なものまでボートに持ち込んで濡らしてしまったので、この日は軽装にして、カメラも二コノス1台だけにした。今回初めて使用する水中カメラである。

11時ころ、マークさんが迎えに来て、「ラッキーです。ウォーニング1になりました」と笑顔で言う。ダイバーの家に行くと、「波がだいぶおさまりました。すぐに出ましょう」とにこにこしている。

この日は巻き網を持参した。網の長さ10m、幅2mほどで、上下に浮きと重りがついている。私たちが「どうやって魚を捕まえるのか、ここのやり方を見てみたい」という要望に応えて用意してくれたのだ。

前日は曇って見えなかったが、リーフの外の島の切り立った絶壁が目に入ってきた。高さ50mはあろうか、圧巻である。ダイバーから「波は穏やかになったが、潮の流れが昨日より速くなっているので、十分に気をつけてくれ」と注意を受け、海中での手信号について打ち合わせた。手のひらを左右にひらひらさせたら、緊急事態発生のサインである。

海の色がいつのまにか淡いコバルト・ブルーから濃紺に変わっていた。リーフの外へ出ているのだ。錨がするすると降ろされる。20~25mほどの水深だ。

海に入る4名がボートのへりに後ろ向きに腰を降ろし、メガネをしっかりと押さえて、スタンバイする。緊張の一瞬だ。ダイバーの「1、2、3…」の合図でいっせいに背中から入水する。足ヒレをきかせながら、2度、3度、耳抜きをしながら深く潜っていく。

水の透明度は抜群だが、潮流はかなり速い。私は10m以上の深さにならないように気をつけて、サンゴの間を縫って魚を追いかけていく。10m以上の深さから浮上するとなると、途中で一度減圧しなければいけないし、この速い流れでは中間で止まってその操作をするのが難しいので、無理しないことにした。

私は海水魚についての知識が十分ではないが、フエヤッコやチョウチョウウオの一種らしいことはわかる。色鮮やかな、さまざまな種類の魚が群泳している。魚たちは種別ごとにグループを組んで、訓練された兵隊のように隊列を整えて泳いでいる。先頭が向きを変えると、全体がいっせいにくるりと方向転換する。見事なものだ。途中、大きなナンヨウハギを見つけて、夢中になって追いかけたりしながら、無重力状態の遊泳を楽しんだ。

ちょっと余裕が出てきたので、みながどうしているだろうかとあたりを見回すが、視界には誰も入ってこない。心細くなって後ろを振り返ると、インド人ダイバーの1人がぴったり私のあとをフォローしているので、とりあえず安心した。その手に1匹のタコが捕まえられている。タコが真っ黒い墨を何度も出すので、その周囲は煙幕を張ったみたいだ。彼が自分の腰につけた重りの鉛を1つずつ外して私に手渡してくれたおかげで、浮きやすかったからだのバランスがとりやすくなった。

約束の時間は30分なので、少し早いけど浮上することにした。海面に出て、あっと驚いた。知らない間に潮に流され、われわれのボートが遥か彼方に位置しているではないか。

「やれやれ、この重いボンベを背負ったまま、あそこまで泳ぐのか」とげっそりして泳ぎはじめたら、ダイバーが浮上してきて、「浮いたまま、ここで待ってろ。ボートの方から拾いに来るから」と教えてくれた。彼の手にはいぜんとしてタコがしっかり握られていた。

水上もほどなく浮上してきた。彼は巻き網を使ってダイバーたちと魚とりをしていたのだ。魚の通りそうな岩と岩との間にカーテンを吊るすように網を立て、そこに魚を追い込んでいく方法だとのことで、なるほどと感心させられた。

岸に戻る途中、冷たいスコールが襲ってきた。水上ともども、ずぶ濡れになって寒さでがたがた震えていたが、心の中は満足感いっぱいのルンルン気分だった。ダイバーが捕らえたタコは、彼の家で茹でて、タマネギに併せて料理して食べた。そのうまかったこと、うまかったこと……。

ヤシの木が美しい街の大通り 島の中央に奇怪な形でそびえるピエテポット山
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レインボー・ヒルと呼ばれる丘 樹齢1000年を越す大木はまさに生きた化石だ
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サイクロンの去ったベタ凪の海は神秘的ですらある  
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